作品と釘と
Oさんが友人と来店。
四角い包みを渡される。
開けると去年ギャラリーで印象に残っていた作品。
風雨にさらされ風格を漂わせた四角い板。
そこに凛とした白い十字架が描かれ、なにかとめてある。
それは砂と波に洗われたシュモク貝。
苦悩によじれたかに見える形はキリスト像そのもので怖いぐらい。
物に宿る記憶が存在感となってせまってくる。

昔ベルギーの学生達とメルク修道院の改修工事に参加した。
修道院が世界遺産に登録されるずっと以前のこと。
その現場で拾い集めた古い釘は300年ほど前のもの。
Oさんはそれを白い紙の上にどんどん並べてゆく。
それぞれ形の異なった釘がリズムを持って詩のようだ。
「これはOさんが持っていたほうがいいでしょう」と差し上げる。

    by ♀
[PR]
# by grass-b | 2016-03-07 16:25
シルヴィ・ギエム
シルヴィ・ギエム現役最後の公演。

チケットは夫と離れた席だったけど取れただけでも夢のよう。
ギエムのバレエは軽やかで、やわらかく、切り詰められた動きのエッセンス。
鞭の一振りのような鮮やかな動きが止まったかと思うと躍動する。
四肢の動きに合わせてまとわりついたり離れたりする空気の重さや軽さ。
ひとつの世界を閉じる人の私にとってこの日かぎりの踊りを心に刻む。
確かなものを見たあとの清々しい余韻に満たされて深夜の道を帰った。

    by ♀



[PR]
# by grass-b | 2015-12-31 19:47
Wall and piece
グラフィティ・アーチスト(ストリート・アート)バンクシーの壁に描かれた絵の画集。
なかでもイスラエルとパレスチナの分断壁シリーズはびっくり。
ニューヨークのメトロポリタン美術館や大英博物館でのインスタレーションもとにかくおもしろい。
表紙には覆面のテロリストらしい若者が何かを投げようとしている姿。
投げようとしているのは手榴弾・・と思いきや裏表紙に伸びた手に握られているのは花束なのだ。
ウイットに富んだメッセージには共感できる。

こちらも。

八十のテロリストということやあるひとつの憤怒やりすごしつつ
                              坪野哲久

哲久81歳最晩年の作品。
奔放で気持ちいいほど。

 by  店主♀

[PR]
# by grass-b | 2015-06-18 05:05
レース
白いレースのハンカチを頂いた。
手を拭くのにはもったいなくて大切にしている器の間にそっと挟む。
レースは編んだ糸を見ているのではなく小さな隙間を模様として見ているのだとなにかで読んだ記憶がある。
そこにないものを見ている。
ないものを見て美しいと感じているのだと。

Aさんは80代のおしゃれなご婦人。
何年も前のこと、襟元にアンティークの小さなレースを銀のピンでとめていらした。
以来レースの店があるとつい覗いてしまう。
でも気づいたのはピンが肝心ということ。
あのしぶい輝きのピンでとめてこそだったような気がするのだ。


       by 店主 ♀
[PR]
# by grass-b | 2015-05-31 12:39
テラスで
夕方からテラスでかおりちゃんのバンドネオンのライブ。

早めにいらした御夫婦の奥様が駐車場で花を摘んでいた。
「ドレスアップしてこなかったので」とお茶目な笑顔。
白いブラウスの胸元に飾られた野の花の小さなブーケ。

演奏が始まってはっとした。
前回より1歩も2歩も踊りでた感じがしたこと。
自分そのものに降りていくことで、音楽の場に立つ方法を知ったのか。
彼女のオリジナルはユーモアと、叙情とそこはかとない幻想味が魅力。
イメージが飛翔する。
終わったあと、心の中に不思議な風が吹き渡ったような感に打たれた。

    店主 by ♀

[PR]
# by grass-b | 2015-05-20 16:21
K氏
K氏来店。
店を閉めたと人づてに聞いて驚いたばかり。
個性のある店がまたひとつなくなって街に深みがなっくなってゆく。
それにしても相変わらずの存在感。
彼の中に抱えているものが独特の雰囲気を醸し出しているようだ。
それを必要としている人は世界にたったひとりかもしれないようなものを売る店。
そんな店が似合うひと。

     by 店主 ♀

[PR]
# by grass-b | 2015-05-02 15:01
震災句
東日本大震災は今だに続いている。
今の連続が人生、生きてる途中で終わりがくる。
現実を受け入れ、そこから始めるしかない。
しっかりしてよ、復興庁。

御中虫による句集「関揺れる」から。
俳友関悦史に向けて書かれた震災句。

「春麗洗濯ものと関揺れる」

「関揺れる人の形を崩さずに」

「揺れるなら止めてみせよう関悦史」

※ 震災句ではないけれど

「月といふのですか、巨きな石ですね」

           御中虫

   店主 by♀

[PR]
# by grass-b | 2015-03-12 05:29
秋の一日
落田謙一さんの展覧会にrikaちゃんと軽井沢へ。
晩秋の軽井沢は浅間山の稜線が薄紫色から紫色に変わって風景のピントが合っている。
現代美術館まで木々の葉を散らすような風と一緒に歩く。

印象に残ったのは海と空が溶け合い、光と色がはじけてるような作品。
描かれるはずのものが、間引かれているような感覚。
自在な浮遊感。
眺めていると視覚的ではないなにかが浮かびあがってくる。
感情の濁りがとれて、透き通った体の中を秋の光が満たしていくようだ。

万平ホテルのカフェテラス。
メニューには「昔ながらのプリン」「伝統のババロア」「ジョンレノンのミルクティー」など。
記憶の中で静かに発光しているもの。

帰り道、日没寸前の空がスミレ色に映える時間。
歩道橋の上で物の形が薄れていく直前の光を彼女が撮る。
あっという間の秋の夕暮れ。

      by ♀

[PR]
# by grass-b | 2014-12-05 20:05
緑の大地計画
中村哲氏の30年に及ぶアフガンでのたたかいの最新報告会。
夫と講演会場である練馬区民交流ホールへ。
満員の会場は平日の昼間のせいか年配者が目立つ。
中村医師は映像を使ってユーモアを交えながら淡々と話された。
頑固さを宿した顔はプリミティブな強さも感じられ清々しい。
アフガンの現状は長い戦乱に加え、頸在化した大干ばつによって最悪の状態という。
戦どころではないのだ。
そこで人々が食べて生きていける大地を取り戻そうと「緑の大地計画」が始まった。
この国家プロジェクトにも匹敵する事業は着々と成果をあげつつある。
砂漠が緑の大地に生まれ変わって稲穂、麦、イモやオレンジまで実るようになった。
住民のよりどころであるイスラム寺院や学校も建設し、難民となっていた65万人が帰郷したという。

後半質問の時間が設けられたが、質問者の情緒的な発言は途中で遮られた。
簡潔な質問のみを求められる。
命がけの営為に安全な場所からの感傷に湿った言葉はなにほどの意味もないのだろう。

中村医師の活動の原動力は大和魂。
心意気だ。
清潔な精神の姿勢がかっこいい。

     店主 by♀

[PR]
# by grass-b | 2014-09-08 15:55
Copyright (C) grass-b. All Rights Reserved.