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ガルシアの隠れ家
by grass-b
楽園

朝坂道を降りて行くと自称猫屋敷のO婦人がぼんやりと家の前に佇んでいた。

彼女はいつもだと別荘地のノラ猫達に餌を与えに行ってる時間だ。

「あなたはどちらさまか分かりませんが一昨日主人が亡くなったんです」と言う。

昔ご主人と店にいらしたこともあるのだが私のことは覚えていないようだ。


後日ご焼香に伺う。

庭には丈の低いすももの木が四方八方に枝を広げて満開の白い花をつけていた。

入り口の手すりにもたれて、花の下にしゃがんでいるO婦人と猫の姿にしばし見とれる。

夢のような光景。

楽園という言葉が浮かぶ。

家の中はダイニングテーブルの下に電気マットが敷かれ猫達がてんこもりになって寝ていた。

猫の山。

「主人は私のことが好きで好きで」やつれは見えるが横顔が美しい。

新しくできた海辺の病院で亡くなったそうで臨終の言葉は「にしんはきてるか」

さばとらの猫が仏間に入ってくる。

あるかないかの両耳がかわいい。

「この子は冬に2週間家をあけて戻ってきたら耳が凍傷になってて、ある日ここにポロポロと耳の先っぽが落ちてたの」と、畳を指差す。

陽が傾いてきたのでおいとますることに。

言葉が追いかけてくる。

「主人は私のことが好きで好きで・・・あら、私さっきと同じことを言ってます?」

窓の外を埋め尽くすかのような白い花。


    by 店主 ♀


# by grass-b | 2016-04-04 08:56
日毎オープン!

日毎オープン!!


隣り村ならぬ隣り山、といってもご近所の友人Rちゃんがカフェをオープン。→

満を持してという言葉がぴったり。

県道から私道を上がると緑に包まれた空間にすっきりとした佇まいの店があります。

この辺りでは珍しい本格的な南インドカレーや、体に優しいワンプレートランチ、和を取り入れたスイーツなど。

こだわりのメニューやそこかしこにさりげなく置かれた小物にいたるまで彼女らしさが感じられて素敵。

基本的には一人でやっていますので時間に余裕を持って行かれることをおすすめします。


    by 店主  ♀


# by grass-b | 2016-03-12 15:42
作品と釘と
Oさんが友人と来店。
四角い包みを渡される。
開けると去年ギャラリーで印象に残っていた作品。
風雨にさらされ風格を漂わせた四角い板。
そこに凛とした白い十字架が描かれ、なにかとめてある。
それは砂と波に洗われたシュモク貝。
苦悩によじれたかに見える形はキリスト像そのもので怖いぐらい。
物に宿る記憶が存在感となってせまってくる。

昔ベルギーの学生達とメルク修道院の改修工事に参加した。
修道院が世界遺産に登録されるずっと以前のこと。
その現場で拾い集めた古い釘は300年ほど前のもの。
Oさんはそれを白い紙の上にどんどん並べてゆく。
それぞれ形の異なった釘がリズムを持って詩のようだ。
「これはOさんが持っていたほうがいいでしょう」と差し上げる。

    by ♀
# by grass-b | 2016-03-07 16:25
シルヴィ・ギエム
シルヴィ・ギエム現役最後の公演。

チケットは夫と離れた席だったけど取れただけでも夢のよう。
ギエムのバレエは軽やかで、やわらかく、切り詰められた動きのエッセンス。
鞭の一振りのような鮮やかな動きが止まったかと思うと躍動する。
四肢の動きに合わせてまとわりついたり離れたりする空気の重さや軽さ。
ひとつの世界を閉じる人の私にとってこの日かぎりの踊りを心に刻む。
確かなものを見たあとの清々しい余韻に満たされて深夜の道を帰った。

    by ♀



# by grass-b | 2015-12-31 19:47
Wall and piece
グラフィティ・アーチスト(ストリート・アート)バンクシーの壁に描かれた絵の画集。
なかでもイスラエルとパレスチナの分断壁シリーズはびっくり。
ニューヨークのメトロポリタン美術館や大英博物館でのインスタレーションもとにかくおもしろい。
表紙には覆面のテロリストらしい若者が何かを投げようとしている姿。
投げようとしているのは手榴弾・・と思いきや裏表紙に伸びた手に握られているのは花束なのだ。
ウイットに富んだメッセージには共感できる。

こちらも。

八十のテロリストということやあるひとつの憤怒やりすごしつつ
                              坪野哲久

哲久81歳最晩年の作品。
奔放で気持ちいいほど。

 by  店主♀

# by grass-b | 2015-06-18 05:05
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